財務管理

不動産業の日繰り表(資金日計表)の作り方|月次の資金繰り表との違いと使い分け

監修:金井 雅弘

日繰り表(資金日計表)とは、月次の資金繰り表を「日」の単位まで分解し、前日残高にその日の入出金を加減して当日末残高を出す表です。月次表では「今月は黒字」と分かっていても、決済・仕入・外注費の支払いが特定の日にまとまって動く不動産業・建設業では、月中の一時的な資金不足を月次表だけでは捉えられません。作り方は、契約書・請求書・返済予定表から確定している大口の入出金日を先に埋め、その上で給与・家賃など経常的な支出や売掛金回収の予定を重ねていく順番が実務的です。すべての月を日次で管理する必要はなく、決済月や支払い集中月に絞って運用している会社も多くあります。この記事では、日繰り表の具体的な作り方と、月次の資金繰り表との使い分けを解説します。

日繰り表(資金日計表)とは何か

月次の資金繰り表では見えない「日単位の谷」

資金繰り表は通常、月次(または半年〜1年先まで)で作成し、月ごとの収支と繰越残高を把握するための表です。日本政策金融公庫が公開している資金繰り表のテンプレートも、月次単位で「現金売上」「売掛金回収」「現金仕入」「買掛金支払」などを積み上げる構成になっています(日本政策金融公庫「資金繰り表(記入例)」)。

一方、日繰り表(資金日計表)は、この月次の収支を「日」の単位まで分解した表です。中小企業向けの経営支援情報を提供するJ-Net21でも、資金繰り表は将来の現金収支を可視化し資金ショートを未然に防ぐためのツールと説明されていますが(J-Net21「資金繰り表を活用する」)、月次の表だけでは「月末は黒字でも、月中の特定の日に一時的な資金不足が起きる」パターンを捉えられません。不動産売買業のように、仕入(物件取得)や売上(決済・引渡し)が特定の1日に集中する業種ほど、この日単位の管理が重要になります。月次表そのものの項目設計と、更新が止まってしまう理由は資金繰り表のExcel更新が続かない理由で整理しています。

なぜ不動産業・建設業で特に必要か

不動産売買業は、物件の仕入(決済)で数千万〜数億円が一度に出ていき、売却(決済)でまとまった資金が一度に入ってくるという業態です。仕入決済日と売却決済日がずれれば、その間は多額の資金を立て替える形になります。建設業も同様に、着手金の支払い・下請けへの外注費支払い・工事代金の入金(多くは工事完了後)のタイミングがずれやすく、月次では黒字でも、特定の支払日に手元資金が不足するリスクを抱えています。このズレが生まれる構造と対策は工事代金の入金と支払いのズレはなぜ起きる?で詳しく扱っています。また、どの物件にいくら資金が固定されているかは販売用不動産の在庫管理表に必要な項目とは?の考え方で押さえられます。

日繰り表を作ることで、「今月は資金繰りが順調に見えるが、15日の外注費支払いと20日の物件決済が重なる週だけ資金が薄くなる」といった、月次表では見えない山と谷を事前に把握できます。

日繰り表に必要な項目

基本構成は資金繰り表と同じ、粒度が日次になる

日繰り表の基本的な考え方は月次の資金繰り表と変わりません。前日(または当日始業時点)の残高に、その日の入金・出金を加減して、当日末の残高を出す積み上げ方式です。不動産業・建設業向けに項目を整理すると、次のようになります。

区分主な項目不動産業・建設業での具体例
前日繰越残高前日末時点の現金・預金残高全口座の合算残高
経常収入売掛金回収、現金売上賃貸管理手数料の入金、仲介手数料の入金
大口収入(臨時)物件売却代金、工事代金入金物件決済による売却代金入金
経常支出買掛金支払、人件費、諸経費給与、家賃、水道光熱費、通信費
大口支出(臨時)物件仕入代金、外注費、着手金支払物件決済による仕入代金支払、下請けへの外注費支払
財務収支借入金の実行・返済、利息支払短期融資の実行日、約定返済日
当日末残高上記を差し引きした当日末の残高翌日繰越残高として翌日欄へ転記

ポイントは、経常的な小口の入出金と、物件決済のような大口・臨時の入出金を分けて記録することです。大口の予定を経常収支に混ぜてしまうと、いつ資金が薄くなるかが一覧でひと目で分からなくなります。

大口の予定は「確定日」を軸に管理する

不動産の決済日、工事代金の支払期日、借入金の返済日は、契約書や請求書ですでに日付が確定しているものが大半です。日繰り表では、これらの確定日をまず先に埋め、その上で経常的な入出金(給与・家賃など毎月ほぼ固定の支出)を重ねていく順番で作ると、精度の高い表になります。

月次資金繰り表と日繰り表(資金日計表)の違い・使い分け

両者の役割は異なる、どちらか一方で足りるわけではない

月次の資金繰り表と日繰り表は、どちらか片方があれば十分というものではなく、目的が異なる補完関係にあります。

比較項目月次の資金繰り表日繰り表(資金日計表)
管理単位月次(半年〜1年先まで見通す)日次(1ヵ月〜数週間先を細かく見る)
主な目的中長期の資金計画、金融機関への説明資料直近の資金ショート回避、支払日の調整
向いている場面決算・融資申込時の全体像の提示物件決済や大口支払いが集中する時期の管理
更新頻度月1回程度毎日〜週次
見えるリスク月単位の資金不足の兆候特定の日の資金ショート

月次表は金融機関への説明や中長期の計画立案に向いており、日繰り表は目先の支払いに耐えられるかを日単位で確認するのに向いています。特に物件決済を控えている月や、複数の工事代金支払いが重なる月は、月次表に加えて日繰り表を並走させることで、資金ショートの見落としを防げます。

運用のコツ:まずは決済・支払いが集中する月だけでもよい

すべての月を日次で管理するのは手間がかかります。実務では、大口の入出金予定がある月(決済月、繁忙期の支払い集中月など)に絞って日繰り表を作り、平常月は月次の資金繰り表だけで運用する、という使い分けをしている会社も多くあります。まずは直近1〜2ヵ月分を日単位で作ってみて、資金の谷になりそうな日を洗い出すところから始めるのが現実的です。

日繰り表の作り方(手順)

ステップで作成する

  1. 全口座の当日始業時点の残高を合算し、初日の繰越残高とする
  2. 契約書・請求書・返済予定表から、確定している大口の入出金日と金額を先に埋める(物件決済、工事代金支払、借入金の実行・返済など。返済日の整理は物件別の返済予定表はどう管理する?を参照)
  3. 給与・家賃・水道光熱費など、毎月ほぼ固定で発生する経常的な支出を該当日に記入する
  4. 売掛金の回収予定日を、取引条件(サイト)に基づいて記入する
  5. 日ごとに「収入合計-支出合計=当日の増減」を計算し、前日残高に加減して当日末残高を出す
  6. 当日末残高がマイナスに近づく日(谷)がないかを確認し、支払日の調整や資金調達の必要性を検討する(追加調達の見立ては借入余力の見方が参考になります)

日本政策金融公庫のテンプレートも、前月の実績を出発点にして予定を積み上げていく作り方を示しており(前掲の記入例)、日繰り表でも「実績から出発し、確定情報→見込み情報の順で埋めていく」という考え方は同じです。

Smart CFO なら日繰り表の作成・更新を自動化できる

日繰り表は考え方自体はシンプルですが、Excelで手作業運用すると、口座残高の反映が後手に回ったり、物件決済のような大口予定を転記し忘れたりして、更新が止まりがちです。Smart CFOでは、資金繰りダッシュボードで日次・月次の両方の将来残高を可視化しており、銀行口座残高(Moneytree連携)を通じて実際の入出金を自動反映します。見込みと実績を切り替えて確認できるため、「予定通りに進んでいるか」「実績が予定からどうズレているか」をその都度手作業で照合する必要がありません。また、物件の決済日など大口の入出金予定をあらかじめ登録しておくことで、日単位の資金の谷を事前に把握できます。なお、Smart CFOは会計ソフトの代替ではなく、記帳や決算はカバーしません。日々の記帳・決算は既存の会計ソフトで行い、資金繰りの見通しをSmart CFOで管理する、という役割分担になります。

日繰り表は、一度作れば終わりではなく、決済や大口支払いのたびに更新し続けて初めて意味を持つ資料です。まずは直近の決済月・支払い集中月だけでも日単位の表を作り、資金の谷が実際にどこにあるかを確認するところから始めてみてください。

よくある質問

日繰り表(資金日計表)と月次の資金繰り表は何が違いますか?

月次の資金繰り表は月単位で中長期の資金計画を把握するための表で、金融機関への説明資料としても使われます。一方、日繰り表は同じ収支を日次まで分解し、直近の資金ショート回避や支払日の調整に使うもので、更新頻度も月1回程度と毎日〜週次という違いがあります。両者はどちらか一方があれば足りるものではなく、目的が異なる補完関係にあります。

日繰り表はどのような手順で作ればよいですか?

まず全口座の当日始業時点の残高を合算して初日の繰越残高とし、契約書・請求書・返済予定表から確定している大口の入出金日と金額を先に埋めます。その上で給与や家賃など毎月ほぼ固定で発生する経常的な支出、売掛金の回収予定日を記入し、日ごとに収入合計から支出合計を差し引いて当日末残高を出し、マイナスに近づく日がないかを確認します。

すべての月を日繰り表で管理する必要がありますか?

その必要はありません。実務では、物件決済や繁忙期の支払い集中月など大口の入出金予定がある月に絞って日繰り表を作り、平常月は月次の資金繰り表だけで運用している会社も多くあります。まずは直近1〜2ヵ月分を日単位で作り、資金の谷になりそうな日を洗い出すところから始めるのが現実的です。

この記事の監修者

金井 雅弘

株式会社フォートラスト 代表

  • 宅地建物取引士

都市銀行での融資業務の経験をもとに、不動産オーナー向けの資金調達支援・財務適正化支援に取り組む。金融と不動産の両面から、賃貸経営の実務に即した視点で記事を監修しています。

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