物件別の返済予定表はどう管理する?複数借入を1枚に束ねる項目設計
監修:金井 雅弘
目次
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複数の物件を抱える不動産売買会社や建設会社が返済予定表を1枚に束ねるには、まず「物件名・金融機関名・現在残高・金利・返済方法」など借入1本ごとの基本項目を固定し、その上で物件別×借入別のマトリクスを1枚用意して全体像を可視化するのが実務的な進め方です。項目を整えた後の本番は、その返済予定を会社全体の資金繰り表へ転記・反映させる工程で、新規借入や一部繰上返済が起きるたびに手作業でズレが生じやすい部分でもあります。特に物件売却に伴う一括返済、借換え、金利見直し、据置期間の終了といったイベントは資金繰り表との不整合を招きやすいため、更新ルールとして運用に組み込んでおくと安全です。本記事では、物件別の返済予定表をエクセルで管理する際の項目設計と、全体の資金繰りへの反映方法を実務目線で整理します。
なぜ物件別の返済予定表が管理しにくくなるのか
借入件数が増えるほど「見るべき場所」が分散する
不動産売買会社や建設会社は、物件の仕入れや建築のたびに新規の借入を起こすことが多く、金融機関から届く返済予定表(償還表)は融資契約ごとに1枚ずつ発行されます。物件数×借入本数が増えると、個別のPDFやエクセルをそのつど開いて確認する作業が発生し、「今月どの借入がいくら引き落とされるか」を即答できない状態になりがちです。
さらに、元金均等返済と元利均等返済が金融機関や案件によって混在している会社も少なくありません。元利均等返済は「元金+利息の合計が均等、つまり毎回の支払額が一定額」になる返済方法で、返済計画を立てやすい一方、総返済額は元金均等返済より多くなる傾向があります。逆に元金均等返済は「毎回の返済額のうち元金に充当する部分が一定」で、返済開始初期の負担が重い一方、返済が進むにつれて月々の返済額が軽くなっていきます(全国銀行協会「住宅ローンの仕組みと返済方法」)。この返済方法の違いを1枚のエクセルに正しく落とし込めていないと、数か月後の資金繰りを見誤る原因になります。返済方法の違いによる返済額の目安は、日本政策金融公庫の返済シミュレーションでも確認できます(日本政策金融公庫「返済シミュレーション」)。
物件単位の収支と、会社全体の資金繰りがつながっていない
もう一つのつまずきどころは、「物件Aの返済予定表」と「会社全体の資金繰り表」が別のファイルとして存在し、手作業で転記しない限りつながらない点です。物件を売却・完工した際の返済(一括返済や借換え)を資金繰り表に反映し忘れる、逆に完済済みの借入が資金繰り表に残ったままになる、といったズレは、担当者が変わるタイミングや繁忙期に特に起こりやすくなります。
返済予定表に必須の項目設計
借入1本ごとに持つべき基本項目
物件別の返済予定表を1枚のエクセルに束ねる際は、まず「借入1本」を管理する最小単位の項目を固定します。以下は最低限持たせておきたい項目の例です。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件名・物件ID | どの物件に紐づく借入か | 物件マスタと共通のIDを振る |
| 金融機関名・支店名 | 借入先 | 銀行ごとに担当者・金利交渉窓口が異なるため必須 |
| 借入日・完済予定日 | 融資実行日と返済終了予定日 | 一覧のソート・フィルタに使う |
| 借入当初元金 | 融資実行時の金額 | 実行額と申込額がずれる場合があるので実行額を採用 |
| 現在残高 | 直近時点の元金残高 | 月次更新の対象 |
| 金利(変動/固定の別) | 適用金利と金利タイプ | 変動の場合は見直し時期も併記 |
| 返済方法 | 元金均等/元利均等 | 月々の返済額推移の計算根拠 |
| 毎月返済額(元金・利息内訳) | 元金充当分と利息分を分けて記録 | 資金繰り表の科目分解に必要 |
| 返済日(引落日) | 毎月の引落予定日 | 資金繰り表の日繰りと突合 |
| 担保・保証条件 | 担保物件、保証人・保証協会の有無 | 借換え検討時の判断材料 |
| 資金使途 | 用地取得/建築資金/運転資金など | 物件別収支との整合確認に使う |
このうち「毎月返済額(元金・利息内訳)」は特に省略されがちですが、資金繰り表側では元金返済分(財務収支のマイナス)と支払利息(損益計算に絡む費用)を別科目で扱うため、内訳を分けて持たせておくことが後工程を楽にします。
物件別×借入別のマトリクスで全体像を可視化する
借入1本ごとの明細シートとは別に、「物件×借入」を俯瞰できるサマリーシートを1枚用意すると、複数物件・複数金融機関の全体像が一目で把握できます。
| 物件名 | 借入先 | 当初元金 | 現在残高 | 月次返済額 | 完済予定 | 返済方法 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A物件(新築マンション) | ○○銀行 本店 | 8,000万円 | 6,200万円 | 130万円 | 2029年3月 | 元利均等 |
| A物件(新築マンション) | 日本政策金融公庫 | 1,500万円 | 900万円 | 45万円 | 2027年9月 | 元金均等 |
| B物件(土地仕入れ) | △△信用金庫 | 3,000万円 | 2,800万円 | 60万円 | 2031年12月 | 元利均等 |
| C物件(戸建て2棟) | □□銀行 支店 | 5,200万円 | 5,200万円 | 90万円 | 2032年6月 | 元利均等 |
(表中の金額・条件は説明用のサンプルであり、実在の取引条件を示すものではありません。)
このマトリクスがあると、「1物件に複数の借入がぶら下がっている状態」や「特定の金融機関への依存度」が視覚化され、金融機関別の残高集計や、物件を売却した際に返済すべき借入の特定がしやすくなります。行を「金融機関」でグループ化・並べ替えすれば銀行取引状況の棚卸しにも転用でき、逆に「物件」でグループ化すれば物件別収支の検討材料にもなります。
物件別データを会社全体の資金繰りに反映させる
返済予定を将来の資金繰り表へ落とし込む
物件別の返済予定表を作った後の本番は、その数字を会社全体の資金繰り表(日繰り表・月次資金繰り表)に反映させる工程です。具体的には、物件別返済予定表の「毎月返済額(元金分)」を資金繰り表の「借入金返済」行に、月ごとの引落日に合わせて転記します。エクセルであれば、返済予定表シートのセルを資金繰り表シート側からSUMIFS等で参照する形にしておくと、新規借入や一部繰上返済が発生しても手動転記のズレを防ぎやすくなります。
見落としやすいイベントを更新ルールに組み込む
以下のようなイベントは、返済予定表と資金繰り表の間でズレが生じやすいタイミングです。更新のたびにチェックする運用ルールを決めておくと安全です。
- 新規借入の実行(当月分から資金繰り表へ即反映)
- 物件売却に伴う一括返済・繰上返済
- 借換え(旧借入の完済と新借入の同時発生)
- 金利見直し(変動金利の見直し時期到来)
- 据置期間の終了(元金返済が始まるタイミング)
据置期間については、日本政策金融公庫の返済シミュレーションでも借入希望金額・返済期間・据置期間・金利を入力して概算の返済額を試算できるため、新規借入を検討する段階で「据置終了後に月々の返済負担がどう変わるか」を事前に確認し、返済予定表に反映しておくと、資金繰り表側の急な悪化を防ぎやすくなります。なお、同シミュレーションの結果はあくまで目安であり、実際の融資条件は個別の審査・契約によって確定する点には留意が必要です。
Smart CFO なら物件×返済予定×資金繰りを1画面でつなげられる
Smart CFO では、融資管理画面で物件ごとの融資情報・返済予定を登録し、複数物件・複数金融機関にまたがる借入を一元管理できます。登録した返済予定は資金繰りダッシュボードの将来残高予測に自動で反映されるため、エクセルでの転記作業や科目の突合を都度行う必要がありません。また、銀行取引状況の一覧や融資相談候補のスコアリング機能もあわせて備えており、「どの借入をどう見直すか」という融資戦略の検討を、返済予定の実績データと同じ画面上で行えます。資金繰り表やその元データはExcel出力にも対応しているため、既存のエクセル運用や税理士・金融機関への提出資料作成と組み合わせて使うことも可能です。なお、Smart CFO は会計ソフトの代替ではなく、記帳や決算処理そのものは対象外です。機能の詳細は借入金管理システムの紹介ページでご覧いただけます。
複数物件・複数金融機関の返済予定を「集める」作業に時間を取られている会社ほど、物件別の返済管理と資金繰りの一体化は着手の効果を実感しやすい領域です。まずは自社の借入を1枚のマトリクスに書き出すところから始めてみてください。
よくある質問
物件別の返済予定表をエクセルで管理する場合、借入1本ごとにどんな項目を用意すればいいですか?
物件名・物件ID、金融機関名・支店名、借入日・完済予定日、借入当初元金、現在残高、金利(変動/固定の別)、返済方法(元金均等/元利均等)、毎月返済額(元金・利息内訳)、返済日(引落日)、担保・保証条件、資金使途といった項目を最小単位として固定するのが基本です。毎月返済額の元金・利息内訳は省略されがちですが、資金繰り表側で元金返済分と支払利息を別科目で扱うため、あらかじめ分けて記録しておくと後の集計が楽になります。
物件別の返済予定表を、会社全体の資金繰り表にどう反映させればいいですか?
物件別返済予定表の「毎月返済額(元金分)」を、資金繰り表の「借入金返済」行に月ごとの引落日に合わせて転記するのが基本の流れです。エクセルであれば、資金繰り表シート側から返済予定表シートのセルを参照する形にしておくと、新規借入や一部繰上返済が発生した際の手動転記のズレを防ぎやすくなります。
返済予定表と資金繰り表の間でズレが生じやすいのはどんなタイミングですか?
新規借入の実行、物件売却に伴う一括返済・繰上返済、借換え(旧借入の完済と新借入の同時発生)、金利見直し(変動金利の見直し時期到来)、据置期間の終了(元金返済が始まるタイミング)の5つが特に生じやすいイベントです。これらは更新のたびにチェックする運用ルールを決めておくと、ズレを防ぎやすくなります。
この記事の監修者
金井 雅弘
株式会社フォートラスト 代表
- 宅地建物取引士
都市銀行での融資業務の経験をもとに、不動産オーナー向けの資金調達支援・財務適正化支援に取り組む。金融と不動産の両面から、賃貸経営の実務に即した視点で記事を監修しています。
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