財務管理

銀行取引状況一覧表の作り方|融資相談で金融機関に求められる項目と書き方

監修:金井 雅弘

銀行取引状況一覧表(取引金融機関一覧表)に決まったフォーマットは存在せず、各社が自社の状況に合わせて作成する必要があります。記載すべき必須項目は、金融機関名・支店名、借入種別、当初借入金額、借入残高、返済方法・返済期日、金利、担保・保証の状況、資金使途の8点で、これらを一つの基準日に揃えて記載することが重要です。基準日がずれると金融機関側が資金繰りの全体像を正しく把握できず、返済予定表との残高不整合にもつながります。不動産売買会社や建設会社は複数の金融機関から案件ごとに資金調達することが多く、気づけば取引先が5行、6行と増えているケースは珍しくありません。

新規の融資相談や借換え、あるいは決算報告のタイミングで、金融機関から一覧表の提出を求められた経験がある経理・財務担当者も多いはずです。本記事では、金融機関がこの一覧表で何を確認しようとしているのかという背景から、実務で使える記入項目、記入例、作成時の注意点まで、複数金融機関と取引がある法人の担当者向けに整理します。

なぜ「銀行取引状況一覧表」が求められるのか

融資審査では、決算書や試算表だけでなく、会社の資金調達構造そのものが評価対象になります。特に不動産売買会社や建設会社は借入金額が大きく、複数の金融機関からプロジェクトファイナンス的に資金を引いていることが多いため、金融機関側は「自社が知らないところでどれだけの負債を抱えているか」「返済負担がどのタイミングに集中するか」を正確に把握したいと考えます。

メインバンク制と情報開示の関係

中小企業庁の中小企業白書では、中小企業金融において間接金融(銀行融資)が中心的な役割を果たしており、メインバンクが企業の経営状態を継続的にモニタリングしながら貸出を行い、他の金融機関の貸出判断にも影響を与える構造が指摘されています(2024年版「中小企業白書」第1節 中小企業と間接金融|中小企業庁)。つまり、ある金融機関は自社との取引情報だけでは全体像を把握できず、他行との取引状況を含めた開示があって初めて、追加融資や条件変更の可否を適切に判断できるということです。取引金融機関一覧表は、この情報ギャップを埋めるための資料と位置づけられます。

信用保証協会の保証付き融資を利用している場合、保証協会自体が実質的なメインバンク的役割を果たすこともあるとされます。保証制度の枠組みについては、全国信用保証協会連合会が公開している情報も参考になります(一般社団法人全国信用保証協会連合会「信用保証制度」)。

新規融資の相談、既存融資の条件変更(リスケジュール)、決算報告のいずれの場面でも求められる可能性があり、対応する担当者は普段からいつでも出せる状態にしておくことが望ましいでしょう。

一覧表に載せるべき基本項目

一覧表のフォーマットは金融機関ごとに指定書式がある場合とない場合があります。指定書式がない場合は、以下の項目を網羅した自社フォーマットを用意しておくと、どの金融機関から求められてもスムーズに対応できます。

記載必須項目の一覧

項目内容記載のポイント
金融機関名・支店名取引している銀行・信用金庫・信用組合の正式名称と支店略称ではなく正式名称で統一する
借入種別証書貸付、手形貸付、当座貸越など種別によって返済方法が異なるため区別する
当初借入金額融資実行時の借入総額増額・借換えがあれば最新実行分を記載
借入残高一覧表作成基準日時点の残高基準日を明記し全行同一時点に揃える
返済方法・返済期日元利均等・元金均等・最終期限一括など毎月返済額と最終返済期日を分けて書く
金利固定・変動の別と適用金利変動の場合は基準金利+スプレッドも書く
担保・保証の状況不動産担保、信用保証協会保証、経営者保証など担保物件が重複していないか確認
資金使途運転資金、設備資金、物件取得資金など案件名や物件名を添えると分かりやすい

不動産・建設業の場合は、案件(物件)ごとに借入がひも付いていることが多いため、「借入一覧」に加えて「どの物件・工事に対する借入か」を示す列を足しておくと、金融機関側も資金使途と返済原資の関係を理解しやすくなります。

信用保証協会保証付き融資の扱い

新型コロナ関連の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)以降、信用保証協会の保証付き融資を活用する中小企業が増えたとされています。保証付き融資は民間金融機関のプロパー融資と条件(金利、返済期間、保証料の有無)が大きく異なるため、一覧表では保証の有無を必ず別列で明示し、プロパー融資と混同されないようにしましょう。

記入例で見る書き方のイメージ

実際にどのように埋めていくか、簡略化した記入例を示します(数値はあくまでサンプルであり、実在の取引条件を示すものではありません)。

記入例(基準日:決算期末など任意の日付で統一)

金融機関借入種別当初金額残高金利最終返済期日担保・保証
○○銀行△△支店証書貸付(物件A取得資金)1億円6,500万円変動20XX年3月物件A抵当権設定
□□信用金庫××支店証書貸付(運転資金)3,000万円1,800万円固定20XX年8月信用保証協会保証付き
△△銀行本店当座貸越5,000万円(極度額)2,000万円変動継続契約経営者保証あり

このように借入ごとに1行を割り当て、合計残高を末尾に記載します。金融機関によっては「今後の借入予定」「直近の延滞・条件変更の有無」の記載を求められることもあるため、事前に何を提出するか金融機関に確認しておくと手戻りが減ります。

作成にあたっては、「必ずこのフォーマットでなければ審査が通らない」という性質のものではなく、金融機関ごとに重視するポイントや様式の指定が異なる点に留意してください。指定書式がある場合はそちらを優先し、ない場合は自社の状況が正確に伝わる構成にすることが重要です。

作成時によくあるつまずきポイント

基準日のズレと残高の不整合

複数の借入を別々のタイミングで転記すると、基準日がバラバラになり、金融機関側が資金繰りの全体像を正しく把握できなくなります。一覧表は必ず単一の基準日(多くは直近の試算表締め日や決算期末)で全行の残高を揃えることが基本です。返済予定表と一覧表の残高が食い違っていると、資料の信頼性そのものを疑われかねないため、突合の一手間を惜しまないようにしましょう。

更新の手間が属人化している

不動産・建設業では借入本数が多く、返済のたびに手元のExcelを手作業で更新している会社も少なくありません。担当者が変わると更新ルールが引き継がれず、次に一覧表が必要になったタイミングで慌てて全行に残高照会をかける、という事態も起こりがちです。日頃から借入・返済スケジュールを一元管理し、いつでも最新の残高を出せる状態を維持しておくことが、急な融資相談への対応力につながります。

Smart CFO なら金融機関別の取引状況をいつでも一覧化できます

Smart CFOは、複数物件・複数借入・複数金融機関の情報を一元管理する資金繰り・融資管理SaaSです。融資管理画面では、金融機関別の借入残高や返済予定、金利条件をまとめて閲覧できるため、急に取引金融機関一覧表の提出を求められた場合でも、都度エクセルを作り直す手間を減らせます。また、銀行提出用の資料をExcelファイルとして一括出力できる機能も備えており、資金繰りダッシュボードでは90日先までの資金繰りを可視化できます。なお、Smart CFOは会計ソフトの代替ではなく、記帳や決算処理を行うものではありません。既存の会計・記帳業務と組み合わせて、融資関連の管理業務を補完する位置づけのツールです。機能の詳細は借入金管理システムの紹介ページでご覧いただけます。

複数の金融機関と取引がある不動産・建設会社にとって、取引金融機関一覧表の作成・更新は避けて通れない実務です。基準日を揃え、担保・保証条件まで含めて正確に記載することを心がけつつ、日頃からの一元管理体制を整えておくことが、融資相談をスムーズに進める土台になります。

よくある質問

銀行取引状況一覧表に決まった書式はありますか?

決まったフォーマットは存在せず、各社が自社の状況に合わせて作成する必要があります。金融機関によっては指定書式がある場合とない場合があり、指定書式がある場合はそちらを優先し、ない場合は自社の状況が正確に伝わる構成にすることが重要です。

一覧表にはどんな項目を記載すればよいですか?

金融機関名・支店名、借入種別(証書貸付・手形貸付・当座貸越など)、当初借入金額、借入残高、返済方法・返済期日、金利、担保・保証の状況、資金使途の8項目が基本です。不動産・建設業の場合は、どの物件・工事に対する借入かを示す列を加えると、金融機関側にも資金使途と返済原資の関係が伝わりやすくなります。

一覧表を作成するときに特に注意すべき点は何ですか?

複数の借入を別々のタイミングで転記すると基準日がバラバラになり、金融機関側が資金繰りの全体像を正しく把握できなくなる点に注意が必要です。一覧表は必ず単一の基準日(多くは直近の試算表締め日や決算期末)で全行の残高を揃え、返済予定表との残高不整合がないか突合することが基本です。

この記事の監修者

金井 雅弘

株式会社フォートラスト 代表

  • 宅地建物取引士

都市銀行での融資業務の経験をもとに、不動産オーナー向けの資金調達支援・財務適正化支援に取り組む。金融と不動産の両面から、賃貸経営の実務に即した視点で記事を監修しています。

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