財務管理

賃貸経営で見るべき指標(KPI)の全体地図——入居率からDSCRまで

監修:金井 雅弘

賃貸経営の指標やKPIを調べ始めると、入居率、利回り、DSCR、債務償還年数と用語ばかり増えて、「結局どれを見ればいいのか」が分からなくなりがちです。この記事では、個別の計算式に深入りする前に押さえておきたい「指標の全体地図」を整理します。それぞれの指標がどの問いに答えるものか、そしてなぜ決算のときだけでなく常に見える状態にしておく価値があるのか。数値の水準はあくまで一般的な目安で、評価の基準は金融機関により異なるため、考え方の整理としてお読みください。

指標が多く見えるのは「4つの問い」に分けていないから

4つの問いで指標を整理する

賃貸経営の指標は数が多いようで、答えようとしている問いはおおむね4つに集約できます。

  • 埋まっているか(稼働)——部屋が稼ぐ状態になっているか。入居率や空室期間。
  • 稼げているか(収益性)——物件が生む利益は十分か。利回りやNOI(営業純利益)。
  • 残っているか(資金繰り)——返済と税金を払った後、手元に現金が残るか。手残り(キャッシュフロー)。
  • 返せるか(借入の安全性)——借入が収益に対して重すぎないか。DSCRや債務償還年数、LTV。

「どの指標を見るべきか」で迷ったら、まず「いま自分はどの問いに答えたいのか」から逆算すると、見るべき数字は自然に絞れます。

主要指標の全体地図

指標一覧表

指標答える問いざっくり何を見るか
入居率埋まっているか全室のうち入居中の割合
表面・実質利回り稼げているか物件価格に対する家賃収入の効率
NOI(営業純利益)稼げているか家賃収入から運営経費を引いた利益
手残り(税引後キャッシュフロー)残っているか返済・税金まで払った後に残る現金
DSCR返せるか年間返済額に対する収益の余裕度
債務償還年数返せるかいまの利益で借入を返し切るまでの年数
LTV返せるか物件価値に対する借入残高の割合

たとえばDSCRは、一般に1.0を下回ると収益だけでは返済を賄えていない状態とされ、金融機関が融資判断で重視する指標のひとつです。ただし、求められる水準は金融機関や物件タイプによって異なります。また、税引後の数字は減価償却など税務の扱いで変わるため、正確な計算は税理士等の専門家に確認してください。手残りの基本は手残りの読み方で別途整理しています。DSCRの考え方・改善の方向性はDSCRとは?で詳しく解説しています。DSCRだけをその場で試算したい場合は、DSCR計算ツールから会員登録なしで確認できます。

見る頻度の目安

指標によって、見るべき頻度は異なります。

頻度対象指標理由
日次・週次手残り(資金繰り)資金ショートは即座に経営を止めるため
月次入居率、NOI稼働・収益性の変化を早く捉えるため
年次(見直し時)DSCR、債務償還年数、LTV借入の安全性は決算や借入時の節目で確認すれば足りることが多い

業種別の経営指標を参照する

自社の指標が同業他社と比べてどの水準にあるかを確認したい場合、日本政策金融公庫が業種別に集計・公表している経営指標調査が参考になります。同調査では決算データをもとに、業種ごとの収益性・生産性等の指標値がまとめられています(日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」)。賃貸業単体の指標ではないため、あくまで水準感を掴む参考情報として活用してください。

決算書の数字を入力するだけで収益性・効率性・生産性・安全性・成長性の5項目・27指標を無料・登録不要で診断できる、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「経営自己診断システム」も、同業他社との比較の参考になります(中小機構「経営自己診断システム」)。

指標は「年1回計算する」より「常に見えている」ことに価値がある

気づきが遅れることのリスク

指標の本当の使いどころは、計算した瞬間の値そのものより、変化に気づけることにあります。決算のときにだけ数字をまとめていると、空室の長期化や金利上昇が手残りをじわじわ削っていても、気づくのは最長で1年後です。また物件が2棟、3棟と増えると、物件単位の数字は追えても「会社全体として返せるのか・残っているのか」が急に見えなくなります。金融機関との金利交渉や追加融資の相談も、聞かれてから資料を作り始めるのではなく、日頃から根拠の数字が手元にある状態で臨めるかどうかで、話の進み方が変わります。エクセルでの集計は物件と借入が増えるほど更新が追いつかなくなりがちで、その事情はExcel管理の限界で詳しく触れています。

Smart CFO なら、指標の全体地図が「いつでも見える画面」になる

Smart CFO は、複数物件・複数借入の情報を一元管理し、物件ごとの数字と会社全体の状態を一目で把握できるようにする財務管理サービスです。指標を確認するたびに通帳や資料をかき集めて集計し直す、という手作業から離れ、「見たいときに全体地図が開ける」状態を保てます。金融機関との金利交渉や決算の場面でも、根拠となる数字をその場で示せるため、資料の作り直しに時間を取られません。指標を「勉強するもの」から「日々の判断に使う道具」に変えることが、Smart CFO の役割です。なお、Smart CFO は会計ソフトの代替ではなく、記帳や決算処理は対象外です。

まずは「自社の全体地図」を一度眺めてみる

指標の計算式を完璧に覚えてから、と構える必要はありません。自社の物件と借入をひとつの場所に並べ、4つの問いに答えられる状態を作ることが、賃貸経営の数字に強くなるいちばんの近道です。DSCRだけをその場で試算したい場合は、DSCR計算ツールから会員登録なしで確認できます。いまの管理方法からどう移行すればよいか、自社の規模ならどこから始めるべきかが気になる方は、下記のお問い合わせからお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

金井 雅弘

株式会社フォートラスト 代表

  • 宅地建物取引士

都市銀行での融資業務の経験をもとに、不動産オーナー向けの資金調達支援・財務適正化支援に取り組む。金融と不動産の両面から、賃貸経営の実務に即した視点で記事を監修しています。

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