融資

アパート経営・賃貸経営の融資とは?種類と審査で見られる点

監修:金井 雅弘

1棟目をアパートローンで買ったものの、2棟目の相談では銀行の反応が違って戸惑った——賃貸経営ではよくある場面です。アパート経営・賃貸経営で使える融資にはいくつかの種類があり、事業の規模や段階によって「向く借り方」が変わります。この記事では、代表的な融資の種類と特徴、使い分けの考え方、審査で見られる指標と必要書類、相談までの進め方を整理します。審査基準や条件は金融機関により異なるため、あくまで考え方の目安としてお読みください。

融資の種類は大きく3つ

不動産賃貸業の資金調達で使われる融資は、大きく次の3タイプに分けられます。

種類概要主な特徴
アパートローン賃貸住宅向けのパッケージ型ローン審査基準が定型化されており、個人の属性(年収・資産)と物件の担保評価が中心。手続きが比較的スムーズ
プロパー融資金融機関が個別に審査する事業性融資事業の実績・財務内容を見て条件が決まる。実績次第で金額・条件の柔軟性が出やすい
公的融資政府系金融機関や自治体の制度融資一般に金利水準が抑えめで、創業期や小規模でも相談しやすい。融資額の上限や使途の制約がある場合も

どれが「正解」というものではなく、事業の段階と目的によって使い分けるのが基本です。

アパートローンの位置づけ

パッケージ型のため、審査の観点も手続きも定型化されています。年収や自己資金といった個人の属性、そして物件の担保評価が中心の判断材料です。条件の交渉余地は限られますが、賃貸経営の実績がなくても検討の土俵に乗れる点が最大の利点です。

プロパー融資の位置づけ

金融機関が案件ごとに審査する事業性融資です。決算内容・入居率・返済実績といった「事業としての姿」が判断材料になるため、実績を数字で示せるかどうかが分かれ目になります。取引の積み重ねが効いてくるタイプの融資で、金額・期間・金利の交渉の余地も出やすくなります。

公的融資の位置づけ

日本政策金融公庫などの制度融資は、創業期の資金や、修繕・設備投資など使途が明確な資金で選択肢になります。制度の種類と対象は同公庫の事業資金の融資制度一覧で確認でき、借入額に対する返済額の目線は返済シミュレーションでおおよそ試算できます。民間融資と組み合わせて使われることも多く、「どれか1つを選ぶ」ではなく併用も含めて考えるのが実務的です。

1棟目と2棟目以降で「向く融資」は変わる

初めて物件を買う段階では、賃貸経営の実績がまだないため、個人の属性と物件評価で判断されるアパートローンが入口になりやすいのが一般的です。

2棟目以降は事情が変わります。1棟目の運営実績(入居率・返済状況・決算内容)が審査材料に加わるため、事業性を評価してもらうプロパー融資が視野に入ってきます。段階ごとの整理は次のとおりです。

段階主に検討される融資準備しておきたいもの
1棟目(実績なし)アパートローン、公的融資源泉徴収票・確定申告書、自己資金の証跡、物件資料
2〜3棟目アパートローン+プロパー融資の併用直近の確定申告書・決算書、物件別の収支、既存借入一覧
4棟目以降・法人運営プロパー融資が中心法人決算書、全物件の収支一覧、資金繰り表

規模が大きくなるほど「物件単体の良し悪し」より「事業全体の健全さ」に評価の軸が移ります。どの金融機関に相談するかの選び方は金融機関の種類と特徴も参考にしてください。

金融機関が見るのは「物件」と「事業全体」の両方

種類を問わず、融資審査で共通して見られるのは「その物件が返済に耐えるか」と「事業全体として健全か」の2点です。

よく使われる指標

観点よく見られる指標意味
返済の余裕DSCR(返済余裕率)賃料からの純収益で返済をどれだけ賄えているか(DSCRの基本)
借入の重さ返済比率家賃収入に対する年間返済額の割合
担保の裏付け積算評価・収益還元評価物件そのものの評価額と残債のバランス
事業の継続性入居率・稼働の推移収入が安定して続く見込みがあるか
手元の厚み自己資金・預金残高空室や修繕が重なったときの耐久力

1棟ごとの収支が良くても、全体の借入バランスが崩れていれば評価は伸びません。自分の借入余力がどう見られているかを先に把握しておくと、どの種類の融資をどの金融機関に相談すべきか、当たりを付けやすくなります。

相談時によく求められる資料

金融機関によって差はありますが、賃貸経営の融資相談では次のあたりが定番です。

  • 直近2〜3期分の確定申告書または法人決算書
  • 全物件のレントロール(部屋ごとの賃貸借条件の一覧)
  • 既存借入の一覧(金融機関・残高・金利・返済期限)
  • 物件資料(登記事項証明書、公図、間取り、写真など)
  • 資金繰り表または今後の収支見通し

これらを都度そろえ直すのは相当な手間です。提出資料の整え方は金融機関に出す決算資料で詳しく扱っています。

税務面の前提も押さえておく

融資の可否は決算内容に左右されるため、不動産所得の計算の仕方は無関係ではありません。基本的な考え方は国税庁のNo.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)にまとまっています。法人化の是非や借入の組み方は税務にも影響するため、具体的な進め方は税理士等の専門家にも確認してください。

相談から実行までのおおまかな流れ

  • 事前準備:物件資料と自社の借入・収支をそろえ、返済比率の目線を自分で計算しておく
  • 打診:複数の金融機関に当たる。同時に相談すること自体は一般的だが、進め方は担当者に伝えておく
  • 事前審査:物件と属性の概要で可否の感触を確認する
  • 本審査:決算書・契約関係の書類を提出し、詳細な審査を受ける
  • 契約・実行:条件(金利・期間・保証・特約)を確認して契約する

同じ物件でも金融機関によって評価は分かれます。1行の回答だけで判断せず、複数の見方を集めたほうが条件の相場感がつかめます。

Smart CFO なら、複数物件・複数借入の全体像がその場で出せる

融資の種類を使い分ける段階になると、「どの物件に・どの金融機関から・いくら・どんな条件で借りているか」を正確に並べる作業が避けて通れません。通帳や表計算ソフトで管理していると、金融機関に出す一覧を作るだけで一苦労です。Smart CFO は複数物件・複数借入の残高・返済条件・全体の収支を一元管理し、事業全体を一目で可視化します。プロパー融資の相談や金利交渉の場でも、根拠となる数字をその場で示せる状態を保てるので、資料の作り直しに消耗せず、次の一手の検討に時間を使えます。

まずは無料で、融資額の目線を確認してみる

収益物件の購入や借入条件の見直しを検討する際は、金利・借入期間などを変えたときの手残りも確認しておきましょう。下記の収益物件シミュレーションでは、物件価格・家賃・自己資金などから収支を無料で試算できます。決算書の提出は不要です。試算結果は参考情報であり、実際の収益や融資条件を保証するものではありません。

この記事の監修者

金井 雅弘

株式会社フォートラスト 代表

  • 宅地建物取引士

都市銀行での融資業務の経験をもとに、不動産オーナー向けの資金調達支援・財務適正化支援に取り組む。金融と不動産の両面から、賃貸経営の実務に即した視点で記事を監修しています。

株式会社フォートラストの会社情報 →

関連記事